ギターチューニングの基本

ギターを弾き始めると、最初にぶつかる壁がチューニングです。音を合わせるだけの単純な作業に見えて、実は奥が深い。この記事では、標準チューニングの仕組みから、チューナーの表示の読み方、耳だけで合わせる方法まで、根拠を示しながら順に整理していきます。

標準チューニングとは

ギターの標準チューニング(レギュラーチューニング)は、6弦(いちばん太い弦)から1弦(いちばん細い弦)へ向かって、E–A–D–G–B–E という音名の並びになっています。基準ピッチを A=440Hz としたとき、それぞれの弦の周波数は次のとおりです。

音名周波数(目安)
6弦E2約82Hz
5弦A2110Hz
4弦D3約147Hz
3弦G3196Hz
2弦B3約247Hz
1弦E4約330Hz

数字が並ぶと難しく感じるかもしれませんが、覚える必要はありません。チューナーが自動で判定してくれます。大事なのは「なぜこの並びか」よりも、「今どれくらいズレているか」を読み取れることです。

チューナーの「セント」表示の読み方

チューナーを覗くと、音名の近くに「+5」「−12」のような数字が出ます。これが「セント」という単位です。

セントは、1つの半音を100等分した単位で、1オクターブは1200セントになります。周波数の「比」を基準にした単位なので、基準ピッチが440Hzでも442Hzでも、同じ音程差なら同じセント値で表されます。

読み方はシンプルです。

  • 0付近 … ちょうど合っている
  • +(プラス) … 高すぎる(シャープ)。ペグを緩める方向へ
  • −(マイナス) … 低すぎる(フラット)。ペグを締める方向へ

では、何セント以内なら「合っている」と言えるのでしょうか。人間の耳が聞き分けられるピッチの差は、一般に5セント前後とされています。単音を弾くだけなら±10セント程度は気にならないことが多いのですが、コード(和音)を鳴らすと、数セントのズレでも「うなり」として耳に残りやすくなります。単音の練習なら±5セント、コードを弾くなら0に近いほど気持ちよく響く、と覚えておくとよいと思います。

正しい合わせ方の手順

  1. チューナーのモードを「ギター」またはクロマチック(全音階対応)に設定する
  2. 6弦から1弦へ、太い弦から順に合わせていく
  3. 目標の音より少し低い状態から、ペグを締める方向(音を上げる方向)で合わせる
  4. 1弦まで終わったら、もう一度6弦に戻って全体を確認する

3番目の「低いところから上げて合わせる」やり方には理由があります。ペグの内部にはわずかな遊び(ガタ)があり、緩める方向で止めると、演奏中にその遊びが解消されて音が下がりやすいのです。締める方向で合わせ終えることで弦がしっかり固定され、チューニングが長持ちします。

4番目の「もう一度戻って確認」も、儀式ではなく物理の話です。弦を1本張るたびにネックへかかる力の総量が変わるので、先に合わせた弦が少しずつ動きます。私自身、始めたばかりの頃は、こちらの弦をピンと張ると、さっき合わせたはずのあちらの弦が狂う、という追いかけっこにずいぶん悩まされました。今では、この小さないたちごっこも、物理法則と手を組んで楽器を触っている実感のひとつだと思えるようになりました。

なぜチューニングは狂うのか

「さっき合わせたのに、もうズレている」と感じるのは気のせいではありません。主な原因は次のとおりです。

  • 新しい弦の伸び … 張ったばかりの弦は、内部の張力が落ち着くまで伸び続けます。何度かチューニングを繰り返すうちに安定していきます
  • 温度・湿度の変化 … 木材も金属も、温度や湿度で微妙に伸び縮みします。季節の変わり目や、空調の効いた部屋との出入りでズレやすくなります
  • ペグやナットの摩擦 … チューニングの機構にわずかな引っかかりがあると、演奏中の振動でそこが解消されてピッチが動きます

新しい弦を張った直後にすぐ狂うのは故障ではなく、弾き込むほど安定していく性質のものです。焦らず、何度か合わせ直してあげてください。

耳でも合わせられる:ハーモニクス入門

チューナーが手元になくても、ハーモニクス(倍音)を使えば耳だけで合わせられます。やり方は次のとおりです。

  • 6弦の5フレットのハーモニクスと、5弦の7フレットのハーモニクスを続けて鳴らす。ピッチが合っていれば「ウォンウォン」といううなりが消えて、澄んだ一つの音になります
  • 同じ要領で、5弦5フレット×4弦7フレット、4弦5フレット×3弦7フレット、と隣の弦へ進めます

ここで、多くの解説が見落としがちな点があります。2弦(B弦)と1弦だけは、この「倍音同士」のやり方が通用しません。標準チューニングでは3弦と2弦の間だけ音程の間隔が違う(他は完全4度、ここだけ長3度)ためです。次のように合わせ方を変えます。

  • 6弦の7フレットのハーモニクスと、2弦の開放弦(ハーモニクスではなく普通に鳴らした音)を合わせる
  • 6弦の5フレットのハーモニクスと、1弦の開放弦を合わせる

「倍音同士」ではなく「倍音と開放弦」を合わせる。この一点だけ覚えておけば迷いません。

ただし、ハーモニクスによる調律には限界もあります。倍音(自然な整数比の響き)と、現代のギターが基準とする十二平均律の間にはわずかな理論差があるため、ハーモニクスだけで完璧に合わせても、開放コードを弾くと微妙な違和感が残ることがあります。耳を鍛える練習としては優れていますが、本番前の最終確認はチューナーで行うのが現実的です。

知っておくと面白い話:442Hzと432Hz

基準ピッチは、実は440Hzだけではありません。日本のオーケストラ(NHK交響楽団など)では442Hzが一般的で、家庭のピアノの調律も、特に指定がなければ442Hzで行われることが多いそうです。440Hzとの差はわずか8セントほどですが、ホールで響かせたときの華やかさを求めて、やや高めのピッチが好まれる傾向があります。

一方で、「432Hzは自然で体にいい」という説をネットで見かけたことのある方もいるかもしれません。これについては、事実と俗説を分けてお伝えしたいと思います。432Hzと440Hzの音楽を聴き比べて心拍数や呼吸数への影響を調べた小規模な研究は、実際に存在します(Calamassi & Pomponi, 2019、および医療従事者を対象にした追試)。ただし、いずれもごく小規模な予備的研究で、著者自身がサンプル数の限界を認めています。「432Hzが宇宙の法則と一致する」といった主張に科学的な裏づけはありません。小さな研究による示唆はあるけれど、確立された結論ではない。それが現時点での正確なところです。

数字に振り回されるより、まずは自分の耳と、目の前の1本に向き合うことから始めれば十分だと思います。

MNTNで合わせてみる

ここまで読んで「結局、耳を育てるのがいちばん大事そうだ」と感じた方には、MNTNのチューナー機能を試してみてほしいです。48種類の基準音と±40セントの表示に加えて、耳のトレーニングモードでは、音を聞き分ける感覚そのものを鍛えられます。チューナーに頼りきりにならず、いずれ自分の耳で「合っている」と分かるようになる。MNTNは、そんな使い方を目指して作りました。

メトロノーム機能と合わせれば、テンポも音程も、練習の土台をこの一画面で整えられます。

参考