ベースのチューニング入門 — なぜ5度ではなく4度で合わせるのか

この記事でわかること:ベースの標準チューニングはE-A-D-G(ギターの下4弦と同じ音名で1オクターブ低い)。なぜ5度ではなく4度で合わせるのか、ドロップDのやり方、5弦ベースの低いB弦の合わせ方までを解説します。

バイオリン、ビオラ、チェロ。オーケストラの弦楽器の多くは、隣り合う弦を「5度」という間隔で合わせます(「度」は音の高さの離れ具合を数える単位です)。ところがベースだけは違います。ギターの下4本と同じ並びの「4度」。なぜベースだけが仲間外れになったのか。その理由の話から、順に整理していきます。

標準チューニングは E-A-D-G

4弦ベースは、低い方から E-A-D-G に合わせます。基準ピッチを A=440Hz としたときの音名と周波数は次のとおりです。

音名周波数(目安)
4弦(いちばん太い)E1約41.2Hz
3弦A1約55.0Hz
2弦D2約73.4Hz
1弦(いちばん細い)G2約98.0Hz

ギターを弾いたことがある人は、この並びに見覚えがあるはずです。ギターの6弦・5弦・4弦・3弦(E-A-D-G)と、音名だけを見ればまったく同じ。ただし実際の高さは1オクターブ低いのです。ベースの譜面は実音より1オクターブ高く書く慣習があるため、「E」という表記だけを見てギターと同じ高さに合わせてしまうのが、初心者がいちばんつまずきやすいポイントです。チューナーで音名の横のオクターブ数字(E1かE2か)まで必ず確認してください。

なぜ4度なのか

バイオリン、ビオラ、チェロは、隣り合う弦の音の間隔がすべて「5度」です。ところが弦楽器の低音を担うコントラバス(ダブルベース)だけは、間隔が「4度」。ベースはこのコントラバスの調弦を、音の高さごとそのまま受け継いでいます。

この「仲間外れ」には、2つの理由があります。

ひとつは出自です。コントラバスは、バイオリンだけの家系というより、ヴィオールという、バイオリンより古い時代に使われていた似た形の弦楽器の性質を色濃く受け継いだ、いわば「混血」の楽器だとされています。ヴィオールは4度を基本とした調弦の楽器で、この性質がコントラバスにも伝わりました。

もうひとつは、単純に楽器が大きすぎたからです。コントラバスはチェロよりずっと弦が長いので、指板の上で同じ音の幅を押さえようとすると、手を大きく動かさなければなりません。もしバイオリンやチェロと同じ5度調弦にしていたら、この移動幅がさらに広がり、速いフレーズが弾きにくくなっていたはずです。こうした事情から、19世紀前半にかけて4度調弦がしだいに主流になっていきました。

そして1951年、レオ・フェンダーが、初めて広く商業的に成功したエレキベース「プレシジョン・ベース」を発売したとき、彼はこのコントラバスのE-A-D-Gをそのまま採用しました。フレットが付いたことで正確な音程が取れるようになったという意味を込めて「プレシジョン(精密)」と名付けられたこの楽器が、いまのベースの音の高さの原点です。

ドロップD(D-A-D-G)

4弦のEだけを1音下げてD(約36.7Hz)にする調弦が「ドロップD」です。1〜3弦はそのまま変えません。

  • 並び: D-A-D-G(4弦から順に)
  • ロックやメタルで多用される、低く重いリフ(=繰り返しの短いフレーズ)を弾きやすくする調弦

合わせ方のコツは、これまでの流れと同じです。目標のDより少し低いところまで下げてから、締める方向(音を上げる方向)で合わせると安定します。曲の途中で切り替える程度であれば、神経質になりすぎる必要はありません。まずはレギュラーチューニングに慣れてから試してみてください。

5弦ベースの低いB弦

弦を1本増やした5弦ベースでは、いちばん一般的なのは低いB弦を足す方式です。

  • 並び: B-E-A-D-G(低いBが加わる)
  • B0の周波数はおよそ31Hz。Eよりさらに低い音(4度下)

この低いB弦、合わせるのに苦労した経験がある人は多いはずです。理由は物理的なものです。31Hzという高さは、人の耳が音の高さとして聴き取りにくくなる領域に近く、スマホやノートPCの小さなスピーカーでは、そもそもこの高さの音を鳴らせないことがあります。耳で聴き比べようとしても、聴こえていない音は聴き比べようがありません。低音弦こそ、耳よりチューナーの表示を信じるのが確実です。

もうひとつの「合わせにくさ」は張力です。低いB弦は緩みやすく、業界では「フロッピーB(ゆるいB弦)」と呼ばれる悩みがよく話題になります。太めの弦(ゲージ)に変える、34インチより長い35インチスケール(=弦の長さが長いタイプ)の楽器を選ぶといった対策がありますが、これは弦選びと楽器のセッティングの話なので、まずは今の楽器のまま丁寧に、根気よく合わせることから始めれば十分です。

低い音は、耳より目で

低音って、耳だけで聴いているわけではないと思います。お腹や身体の奥のほうで「感じる」もの。低いEやBの弦を合わせるたびに、そのことを思い出します。だから高い弦のときのように、耳の印象だけで合っていると確信しづらいのです。

これには、科学的な裏付けもあります。人の耳は、低い音の元になる周波数(基音)が実際には鳴っていなくても、その上に重なる倍音(=元の音と一緒に鳴っている、より高い音の集まり)の並びから、脳が元の高さを勝手に補って聴かせてくれる性質を持っています。便利な仕組みですが、これに頼りきると、低い音ほど細かい高さのズレには気づきにくくなります。

だからこそ、低い弦を合わせるときは、耳の印象より画面の表示を信じてください。MNTNのチューナーは音名をオクターブ付きで表示するので(「MNTN」にトップページ / へのリンクを張ってください)、E1とE2のような取り違えも起きません。5弦のB0のような低い音でも、目でしっかり確認しながら合わせられます。

MNTNで合わせてみる

ベースのチューニングでいちばん大事なのは、ギターと同じ音名でも実は1オクターブ低いという違いに気づくことでした。MNTNのチューナーは48種類の基準音に対応しているので、ドロップDでも5弦ベースでも、そのまま使えます。

低音弦のチューニングに慣れてきたら、耳のトレーニングモードにもぜひ挑戦してみてください。低い音の合っている感覚を耳で覚えていくと、チューナーを見なくても違和感に気づける瞬間が増えていきます。

チューニングのセントの読み方や、下から上げて合わせる理由については、ギターチューニングの基本で詳しく説明しています。ベースも仕組みはまったく同じです。

参考