ウクレレのチューニング入門 — なぜ4弦がいちばん低い音じゃないのか
ウクレレの弦は4本しかありません。ギターより2本少なくて、覚えるのも簡単そうです。ところが実際にチューナーを手に合わせ始めると、多くの人が一度は戸惑います。いちばん上の弦(4弦)が、いちばん低い音ではないのです。この記事では、標準チューニングの基本から、この「4弦のなぞ」の歴史的な答え、新品の弦が数日狂い続ける理由まで、順に整理していきます。
標準チューニングは G-C-E-A
ソプラノ・コンサート・テナーのウクレレは、共通して「C6調弦」と呼ばれる G-C-E-A に合わせます。基準ピッチを A=440Hz としたときの音名と周波数は次のとおりです。
| 弦 | 音名 | 周波数(目安) |
|---|---|---|
| 4弦(いちばん上) | G4 | 392Hz |
| 3弦 | C4 | 約262Hz |
| 2弦 | E4 | 約330Hz |
| 1弦(いちばん下) | A4 | 440Hz |
表をよく見ると、いちばん低い音は4弦ではなく3弦のC4です。4弦のG4は、2番目に高い音。メーカーの解説では、この「高いG」を小文字にして「gCEA」と書き分ける慣習もあるほどです。
チューナーで合わせるときは、音名の横の数字(オクターブ表示)まで確認してください。同じGでも、G4とG3は1オクターブ違います。ウクレレ初心者のいちばんよくあるつまずきのひとつが、実はこのオクターブの取り違えです。
なぜ4弦がいちばん低くないのか
この並びは「リエントラント・チューニング」と呼ばれます。re-entrant、つまり音の高さが1弦から順に下がっていったあと、4弦で「再び高く戻ってくる」調弦です。
なぜこんな変わった並びなのか。答えはウクレレの生まれた経緯にあります。
ウクレレの故郷はハワイですが、その原型はポルトガルのマデイラ島から来ました。1878年ごろから、ハワイの製糖産業はマデイラ島などから多くの移民を受け入れます。1879年に到着した3人の家具職人が、故郷の小さな弦楽器をもとに現地で楽器を作り始めたのが、ウクレレの始まりとされています。
このとき参照されたのが、マシェーテという小型の4弦楽器と、ラジャンという5弦楽器でした。ウクレレのG-C-E-Aという調弦は、ラジャンの5本の弦から、いちばん低いD弦を除いた「上の4本」をそのまま受け継いだものです。つまり4弦が低くないのは、もともと5弦楽器の「上半分」だったから。なぞの答えは、楽器の家系図に書いてあったわけです。
そしてこの受け継がれた調弦が、ウクレレ特有の軽やかでころころした響きを生みました。どの弦を鳴らしても高めの音が混ざるので、ストロークしたときの音色がきらきらと明るいのです。
High-G と Low-G
ここまで説明してきた標準の形が「High-G」です。一方で、4弦を1オクターブ低いG3(約196Hz)に張り替えた「Low-G」というスタイルもあります。
- High-G … 伝統的なウクレレらしい軽やかな響き。コードストロークや弾き語りに
- Low-G … 低音側に音域が広がり、落ち着いた厚みのある響き。ソロ弾きやジャズ系のアレンジに
ひとつ実務的な注意があります。Low-Gにしたいとき、今張ってあるHigh-G弦をそのまま1オクターブ下げるのは推奨されません。弦の張力が下がりすぎてダレてしまい、音程が安定しないからです。Low-G用の太い専用弦(巻き弦と無巻きの2タイプがあります)に張り替えるのが標準的なやり方です。
どちらが上級ということはなく、響きの好みと弾きたい曲で選べば大丈夫です。
チューニングの手順とコツ
- チューナーをクロマチック(全音階対応)モードにするか、ウクレレモードにする
- 弦は必ず開放弦(何も押さえない状態)で鳴らす
- 目標の音より少し低い状態から、ペグを締める方向(音を上げる方向)で合わせる
- 4本すべて合わせたら、最初の弦に戻ってもう一度確認する
どの弦から合わせるかに決まりはありません。大事なのは、一巡したあとの再確認です。弦を1本張るたびに楽器全体へかかる力が変わるので、先に合わせた弦が少し動きます。
「低いところから上げて合わせる」理由や、チューナーの「セント」表示の読み方は、ギターチューニングの基本で詳しく説明しています。仕組みはウクレレでもまったく同じです。
なお、ウクレレのペグには2種類あります。歯車で減速して細かく合わせられる「ギアペグ」と、摩擦だけで留める伝統的な「フリクションペグ」です。フリクションペグは軽くて見た目もすっきりしていますが、力加減に少し慣れが要ります。合わせにくいと感じたら、腕のせいではなくペグの種類のせいかもしれません。
新品の弦が狂い続けるのは、故障ではありません
買ったばかりのウクレレや、弦を張り替えた直後のウクレレは、合わせても合わせても翌日には狂っています。これで「不良品では」と不安になる人がとても多いのですが、故障ではありません。
ウクレレのナイロン弦やフロロカーボン弦は、金属弦に比べて「ゆっくり伸び続ける」性質が強い素材です。張りたての弦は、内部が落ち着くまで伸び続けるため、その間はチューニングが下がり続けます。弦メーカーの説明では2〜3日で安定するとされていますが、実際には1週間ほどかかったという報告もあります。
馴染みを早めたいときは「プリストレッチ」が定番です。弦を1本ずつ指で軽くつまんで持ち上げ、また合わせ直す。これを何度か繰り返すと、最初の急な伸びを先取りできます。
私自身、新しい弦を張った直後の数日は、正直あまり落ち着きません。合わせても合わせても、次に手に取るとまた少し低くなっている。以前はそれを「不安定な状態」としか思っていませんでしたが、最近は少し見方を変えました。弦が、その楽器の張力にゆっくり馴染んでいく、いわば楽器が育っている期間なのだと捉えるようにしています。じっと収まるのを待つというより、その数日間、毎回きちんと向き合って合わせ直すこと自体が、楽器との関係を作っている気がしています。
寄り道コラム:D6調弦と「小さな鐘」
いまでこそG-C-E-Aが世界標準ですが、20世紀初頭のハワイアン音楽ブームの頃は、全体を1音高くした「D6調弦(A-D-F#-B)」が標準でした。当時の楽譜や、1980年代までの教則本にはこの調弦がよく登場します。カナダでは1960年代から学校の音楽教育にウクレレが広まり、1971年には教育者チャルマーズ・ドーンがD6調弦の教本を刊行。最盛期には5万人もの子どもたちが学んだそうです。
もうひとつ、リエントラント調弦だからこそ輝く奏法があります。「カンパネラ」、イタリア語で小さな鐘という意味です。メロディの連続する音をなるべく別々の弦で弾き、前の音を鳴らしたまま次の音を重ねる。教会の鐘が重なり合って鳴るような、余韻の溶け合う響きが生まれます。1980年代半ばから、この技法でバッハなどの古典をウクレレに持ち込んだ演奏家がいて、いまではソロウクレレの重要な語法のひとつです。4本の弦の「変わった並び」は、こんな豊かさも連れてきました。
MNTNで合わせてみる
ウクレレのチューニングでいちばん大事なのは、G4とG3のようなオクターブの違いに気づけることでした。MNTNのチューナーは音名をオクターブ付きで表示するので、「音名は合っているのに1オクターブ違う」という定番のつまずきを避けられます。48種類の基準音に対応しているので、High-GでもLow-Gでもそのまま使えます。
合わせ終わったら、耳のトレーニングモードもぜひ。「合っている状態」を耳が覚えると、狂いに気づくのも早くなります。小さな楽器との付き合いが、少し深くなるはずです。
参考
- Kala: How to Tune Your Ukulele, Decoded
- Ukulele Magazine: The Birth of the Ukulele
- Wikipedia: Ukulele
- Wikipedia: Rajão
- Live Ukulele: Low-G Ukulele String & Tuning Guide
- Ukulele Tricks: Tuning Your Ukulele to Low G
- Ukulele in the Classroom: The Great Canadian Tuning Debate
- Ukulele Magazine: Learn Campanella Technique
- I Love Classical Ukulele: Campanella Style
- Aquila Corde: Red Series
- Got A Ukulele: A Look Inside Ukulele Friction Tuners
- Fender: How to Tune a Ukulele